ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢

『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』は2008年10月に劇場公開された映画です。

映画のあらすじ

ブロードウェイミュージカルと劇団四季のミュージカルでも有名な『コーラスライン』ですが、2006年秋に16年ぶりに『コーラスライン』の再演が決まりました。そのコーラスラインに出るためのオーディションをドキュメンタリーで追っている映画です。コーラスラインに出れるのは、わずか19の役のみです。その19の席を目指して3000人がオーディションに集まりました。19の席を巡って、オーディションは8ヶ月にも及びます。そして、オーディションを受けにあたって、交通費はいっさいでないという厳しい世界です。見事コニー役に選ばれた、高良結香(YUKA)はLAからNYまで飛行機でオーディションへ行くのは自腹だっと言います。そして、オーディションには多くの舞台で実績を積み上げてきたダンサー達(ジブシーと呼ばれる)が、自分のプライドとなんとしても出演する!という意気込みで、激しく火花を散らします。第一次審査は、演出家のボブ・エイヴィアンが務めています。どんどんとふるいにかけて、落としていきます。あっけないぐらいです。そして、4か月後に再び第二次審査のオーディションが始まります。オリジナルの「コーラスライン」では、ダンサー達の打ち明け話を元にマイケル・ベネット(故人)が原案・振付・演出と3役で作り上げました。そして、その脚本を演じるのも本人たちが演じていましたが、今回は再演です。リバイバル上演になる舞台を演じるために、映画では初演時の記録映像と、オリジナルキャストの証言が加わりながら話は進んでいきます。

そして、貴重なのが今は亡きマイケル・ベネットの映像です。そして現時点のインタビュー映像で、マイケル・ベネットの恋人で、結婚生活(とても短いですが)もマイケル・ベネットと共に過ごしたドナ・マケクニーのインタビューもあります。マイケル・ベネットは常に睡眠薬が話せなかったと言います。ショービスの世界は厳しく、演出家といえども興行成績しだいでどうなるかわからない。ダンサーも厳しい世界ですが、演出家もかなり厳しい世界で生きているといえるでしょう。

ダンサーでいて、振付師のマイケル・ベネット(バイセクシャルですが、同性愛指向が高かった)はエイズで亡くなりましたが、キャシー役のドナ・マケクニーとも同棲していました。マイケル・ベネットとドナ・マケクニーが一緒に生活している時の話も、コーラスラインのストーリー中に入っています。二人が一緒に暮らしている同棲時代、男は仕事に没頭してしまって女性を取り残している状態です。女性は寂さに耐えかねて一緒に暮らしている部屋から出て行きます。そして女性はハリウッドで仕事を求めに出たのですが、結局ハリウッドで夢を叶えることは出来ずにNYに戻ってきます。そして、女性は『コーラスライン』のオーディションを受けにやって来ます。その女性が、ドナ・マケクニーで男性がマイケル・ベネット。そしてこの話は事実2人の間で起こった出来事です。そして、ミュージカル『コーラスライン』のキャシーは、ドナ・マケクニーそのもの。オーディションを受けにきたダンサーよりも、ドナ・マケクニー自身が自分の役。これは自分が演じるためのものだと思ったに違いありません。そして、ドナ・マケクニーはオーディションに残り見事演じることになりました。

コーラスラインは、主役級の俳優の後ろで歌ったり踊ったりする人達で、決して前で出て行ってはいけない。脇役の後ろ、つまり舞台の中でもその他大勢コーラスダンサーです。決して前に出て行くこと、声を張り上げてアーピールすることは許されません。そのコーラスラインのオーディションに参加するダンサー達を描いています。

舞台の登場人物 - 17人

  • ザック:演出家兼振付家でオーディションの選考側。
  • ダン:26歳。2児の父親でもあるため、ウェイターのアルバイトに精を出している。
  • マギー:両親が不仲だったので、マギーはバレエの世界に逃避。26歳。
  • マイク:24歳。イタリア系。12兄弟の末っ子。4歳の頃に姉の代わりにダンスレッスンを受けてからというもの、ダンスに夢中。
  • コニー:中国系アメリカ人。チビ。チビ。と馬鹿にされている。背が小さいので子役ばかりやっている。小さいので若く見えるが実は31歳。
  • グレッグ:32歳。女性より男性が好き、高校の頃にホモということを自覚。
  • キャシー:ザックの昔の恋人。女優を夢みて一度はダンスを捨てるが、挫折し再度ダンスの世界に戻ってくる。かなりのダンススキルの持ち主。
  • シーラ:29歳。母の夢を叶えるためにダンサーになったものの、未だに芽がでない。年を取るのが怖い。
  • ボビー:29歳。中産階級出身で、学校でも家でも孤立。常に人に注目されることを願っていた。父親と折り合いが悪く故郷を捨てている。
  • ビビ:23歳。ルックスにコンプレックスがある。それは、幼い頃に母親から「美人じゃないけど個性がある」といわれいるから。
  • ジュディ:26歳。両親がケンカばかりしていたせいか、陽気で荒っぽい性格。
  • リチー:26歳。スポーツヒーローだった学校生活。「男の中の男」ということで周囲に一目置かれていたのに、就職先が幼稚園であったことを嘆いている。
  • アル:30歳。クリスティンの夫…というより保護者で、カップルでオーディションを受けにきた。。
  • クリスティン:21歳。アルとは夫婦。ダンスは得意だけど、ひどい上がり症で音痴。
  • ヴァル:25歳。整形美人。ダンスは得意。でも容姿のせいでオーディションに全滅ばかり。美容整形を施して生まれ変わる。
  • マーク:20歳。思春期の悩みがある。初めて夢精を体験したときに、父の医学書で自己診断した病名に驚いて、駆け込むように教会に行き懺悔。
  • ポール:30歳。女性的なのがコンプレックス。男らしくなりたいのに、最初の舞台はゲイショーだった。
  • ダイアナ:26歳。プエルトリコ人。演劇学校で「才能が全くない!」と決め付けられたが、まだ諦められない。

場面設定

舞台は、N.Y.ブロードウェイです。暗闇の中から幕が上がります。そこは、新作のためのオーディションの真っ最中です。

新進演出家ザックの元に集まった大勢のダンサーの中には、ザックの元恋人・キャシーの姿もありました。彼女はかつてスポットライトを浴びたことはありますがハリウッドに進出したものの挫折、一からやり直すつもりで再びブロードウェイに戻ったのでした。

厳しいオーディションに合格したとしても手に入るのは「コーラス」、それは無名の脇役です。「君たちはスターを彩る額縁、誰も僕の目を惹いてはいけない」とザックに宣告されます。それでもダンサーたちはたった8人の採用枠に残るために自分のすべてを賭けていきます。「君たち自身を知りたい」というザックの問いかけに、初めは躊躇しながらも赤裸々に自分の人生について語り始めていきます。

そして、オーディション会場にキャシーも駆け込んで参加します。そんなキャシーにザックが厳しく言い放ちます。一度でも主役を張った人間が、コーラスに耐えられるはずがない。しかし彼女は、自分にはダンスしかないとザックに懇願するのでした。

最後は、女性的な容姿のためにいつも女役しか振り当てられないと悩むポールです。そのポールがルーティンを踊るうち、足の筋を切ってしまいます。やがてすべてのオーディションは終り、発表のときがきました。ヴァル、マイク、リチー、ビビ、ダイアナ、マーク、ボビー、そしてキャシーが残った。彼ら8人は明日から本番に向けて、さらに厳しい稽古に入ることになっていく・・という話です。

ブロードウェイでは、このようなコーラスダンサーのことを、ジプシーと呼ばれてきました。コーラスラインの舞台がなかったら、このようなダンサー達の人生が広く知られることはなかったでしょう。劇中のポールが、親に内緒でゲイボーイ一座に加わるポールのエピソードがありますが、「コーラスライン」の脚本を書いたニコラス・ダンテの実体験によるものです。

私生活に基づきながら描かれた「コーラスライン」それを演じる役者を選ぶオーディションを実写にしたということで、「コーラスライン」のファンはもちろんですが事実がそのままドキュメンタリーなので、舞台の裏側を見るという意味でも楽しめる作品です。

そして、このリヴァイバル版では日本人の高良結香(YUKA)もオーディションを受けているので、余計に興味がわいてきます。YUKAはコニー役を求めるために、オーディションを受けました。コニー役の振付を担当するのは、オリジナル版でコニーを演じたバイヨーク・リーです。YUKAもオーディションで、オリジナル版のコニーを演じた本人の前での演じるのは、ものすごいプレッシャーだったと思います。バイヨーク・リーが最終的に推したのはYUKAではなく、YUKAの親友でもあるJ・エレーン・マルコスでした。バイヨーク・リーは、どうもYUKAが気に入らないというのがありありと見て取れます。『コーラスライン』のコニーはニューヨークのチャイナタウン出身ですが、YUKAは沖縄出身でチャイナタウン出身ではありません。たとてNYに10年ぐらい住んでいたぐらいで、何が分かるのか?!たとえ出身地がチャイナタウンではなくても、人種や宗教が違ってもアメリカで生まれたかどうか?!と言葉の壁というのもあったのではないでしょうか。見事、YUKAはコニー役を仕留めますが、最終審査に残ったのが親友ということもありかなりの葛藤がドキュメンタリーに残されています。

ゲイのポール役には何人もの応募者がいます。でも、審査員たちは何人もの応募者に対して、満足することはできません。そのとき現れたのがジェイソンです。ポールについてはインタビューもありません。このオーディションシーンだけが出てきます。そして、ポール役になったジェイソンは、オーディション会場で審査員全員を泣かせます。シーンでは、何人もの応募者の同じセリフが流れた後に、ジェイソンが喋ります。ジェイソンが、ショーのために女装した姿を両親に見られたときの話は全員に感動を呼びました。それは女装した彼を見た母親の呟く「Oh,my God…」。まるでジェイソンがポールになった。そんな印象的な場面は、審査員だけではなく観客の胸を震わせるでしょう。

ダンスに夢中なマイク役のオーディションでは、「I Can Do That」の華麗なタップを見せます。その中で、ダントツにタップが上手なタイスは、最終審査で目立ちすぎて不合格となります。その後のインタビューで、タイスはかなり大きな事をインタビューで答えています。つまり謙虚ではないということ。長い舞台を演じる中で、性格というのも大事な要素なんだということに気づかされます。テクニックだけではないということです。

シーラ役は、役どころも難しい役です。年齢も決して若くなく、ちょっと年齢が行っている。そしてブロードウェイでのキャリアもそれなりにあり、結婚歴もあり、子供もいる。というシーラは深い役です。オーディションでは、応募者のラシェールが審査員やスタッフに、かなりのインパクトを与えていました。そして、最終審査の場所は、ラシェールが前に出演していた劇場で行われました。以前に出演していた劇場ということもあり、ラシェールは少し感傷的になっていました。オーディションの場で、シーラ役をラシェールはちょっと湿っぽく演じてしまいます。審査員は8か月前の「あの時の演技が良かった」とラシェールに言い彼女は動揺します。そんな動揺している嘘偽りのない姿を、カメラは追っています。ラシェールは結局のところ、8か月前の自分自身に負けたということです。

ビビ役には、初演のツアーでビビを演じた女優の娘が選ばれました。ビビ役を演じた母親の七光りで選ばれたのではなく、応募者の中でもかなり歌が上手く雰囲気的にもピッタリな配役になりました。

キャシー役が一番激しくダンサーとしてしのぎ合いをしたオーディション風景です。まずキャシーという役そのものが、ダンサーとして頂点に立ったことがあるので、ドナ・マケクニーレベルのダンススキルが求めら、そして頂点に立ちながらもハリウッドではだめだったという、かなり底辺も味わっている。そして、役が欲しい。仕事が欲しい!と心の底から求めている難しい役がキャシー役です。最終的には4人まで絞り込まれ、シャーロットとナターシャの一騎打ちとなります。嘘偽りのないドキュメンタリーだからこそみられる、ダンサー達のしのぎ合いがそのまま描かれています。大抜擢もあれば、誰もがなっとくするキャスティングもあったり、本命がまさかの脱落であったりと、まさにストーリーのないドラマになっている映画です。

映画製作者

『ブロードウェイ♪ブロードウェイコーラスラインにかける夢』原題: Every Little Step 制作:アメリカ 制作年:2008年 上映時間:93分

監督:ジェイムズ・D・スターン、アダム・デル・デオ 製作総指揮:ジェイムズ・D・スターン、アダム・デル・デオ

『コーラスライン』 ミュージカルナンバー

  • I Hope I Get It
  • I Can Do That
  • At the Ballet
  • Sing!
  • Hello Twelve, Hello Thirteen, Hello Love(Montage)
  • Nothing
  • The Music and the Mirror
  • Dance: Ten; Looks: Three
  • One
  • What I Did for Love (愛した日々に悔いはない)
  • One(Reprise)

『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』 キャスト

  • キャスト: マイケル・ベネット 、 ドナ・マケクニー 、 ボブ・エイヴィアン 、 バイヨーク・リー
  • キャシー:シャーロット・ダンボワーズ 、ナターシャ・ディアス
  • コニー:ユカ・タカラ 、 J・エレーン・マルコス
  • リッチー: ジェイムズ・T・レーン
  • ディアナ:ナタリー・コルテス
  • マーク: ポール・マクギル
  • グレッグ: マイケル・パーテルノストロ
  • ヴァル: ジェシカ・リー・ゴールディン 、ヴァル ニッキ・スネルソン、 メレディス・パターソン
  • ドン: ブラッド・アンダーソン
  • ビビ: アリサン・ポーター
  • マギー: マーラ・ダヴィ
  • ジュディ: ヘザー・パーセルズ
  • ボビー :ウィル・テイラー
  • シーラ :ラシェール・ラック、 ディードリ・グッドウィン
  • マイク: ジェフリー・スチェクター 、 キース“タイス”ディオリオ
  • クリスティン: クリッシー・ホワイトヘッド
  • アル: トニー・ヤズベック
  • ポール: ジェイソン・タム
  • ザック: マイケル・ベレッセ
  • ラリー: タイラー・ヘインズ